seigoy's diary

旅人間。山やスキー場、京都、アジア中心に彷徨ってます。それに伴って、カメラや車、パソコンが大好き。

凍 (新潮文庫)

凍 (新潮文庫)


山野井夫妻のヒマラヤ・ギャチュンカン登山を追ったノンフィクション小説。しかも著者が沢木耕太郎だから実に見事な流れで、あっという間に読んでしまった。
2人ともストイックなまでに山を追求していて、なんでここまで身を犠牲にしてまで登れるんだろうと驚かされる。でも他のアルピニストのピークハンターとは違って、単純に登りたい山があるから登るというのには親近感が湧いた。その登りたいという気持ちが誰よりも強いから最難関の山を目指し、それに見合った体力と技術を身につけているんだと思う。それがなければギャチュンカンからビパークを繰り返して生還なんか出来ないだろうし、この本が刊行されなかっただろう。それにしても凄い下山で、本当に読みながら息を呑んだ。
またこの本は、その後が書かれているのも良い。凍傷を負って手足の指を切断することになった泰史が、もう山には登れないだろうと諦める心境から再びチャレンジしていく意欲に変わっていった。そこには妻の妙子が手足の指を18本切断しても、何も変わらず明るく振る舞う姿があったからだろう。周りから見ればかなり変わった夫婦だけれど、この上ない最高なペアで羨ましくもある。
その妙子は身体障害者の等級が2級になったという。それでも自分で家事を出来るように工夫し、また山に登っているのには驚かされる。自分は3級なんだけれど、いろんな事にへこたれて、いろんな事を諦めることに慣れてきてしまっているような気がするから、ここを読んで心が痛んだ。もっと極限まで追い込まないといけないなぁって。
いろんな意味でこの本に出会えて良かった。