seigoy's diary

旅人間。山やスキー場、京都、アジア中心に彷徨ってます。それに伴って、カメラや車、パソコンが大好き。

「飛ぶが如く」読破

翔ぶが如く〈10〉 (文春文庫)

翔ぶが如く〈10〉 (文春文庫)


ようやく読み終えた。全10巻3000頁以上を、ほぼ1年かかって。
明治維新から西南戦争終結までを、薩摩武士を中心とした物語。「龍馬がゆく」とか他の司馬作品とは違い、物語というか歴史書に近いかもしれない。町の情景や生活の様子が極力省かれている分、その時々の思想や背景がダイレクトに入ってきた。
明治維新後の出来事は基本的なことは知ってたつもりだったけれど、西郷が征韓論を唱えだし下野し西南戦争に至るまでに、これだけ多くの出来事があったなんて知らなかった。特に西郷が下野した後、大久保(政府)が台湾出兵してたなんて驚いた。また、その間にも西南戦争を回避できる場面もいくつもあったかと思われるのに、結局は戦争に至り薩摩藩が敗北するのは運命だったのであろうか。
その西南戦争は、やはりクライマックスだけあって多くの頁を割き、克明に書かれてあって圧巻だった。ここでも戦場を、熊本から宮崎、鹿児島へと転々と移動したなんて知らなかった。薩摩の暴発を抑えきれずに大将として担がれた西郷が、ほとんど何も指揮しなかった事実も興味深い。桐野や篠原という剛胆な男達に引っ張られたという風にも見えるけれど、自分を含めて暴発した者達の死に場所を探していたかのようにも見える。まさに「ラストサムライ」だったのかもしれない。
この戦いは、幕末から引きずった因縁を清算する場にもなっている。戊辰戦争前は長州の恨みが、戊辰戦争時には会津藩をはじめとする佐幕側の恨みが、薩摩攻撃として現れている。またそれを利用した、薩摩出身政府側の大久保や川路が憎らしくもあった。この大久保や川路が作った内務省が、これからの(軍国)日本の基礎になっていくのも興味深いし詳しく知りたいとも思った。
本当に初めて取り付くには難解なこの小説も、幕末物を読みあさってだったから、面白かったし傑作だった。時間はかかったけれど、年度末の今日に読み終えることが出来てなんか気分いい。