パンドラの匣
- 作者: 太宰治
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1973/11/01
- メディア: 文庫
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『正義と微笑』が日記形式に対して、『パンドラの匣』は友人にあてた書簡形式で進んでいく。書簡なのに生活や気持ちの変化の細部までリアルに表現されているのは、さすが太宰。
青春時代を病棟で過ごす生活は暗さがあって当然なのに、この作品は非常に明るい感じが良かった。看護婦に対する気持ちをひた隠しにして書かれているのは、青春時代特有の気持ちの変化を絶妙に捉えていると思う。そして最後にはその気持ちを表に出しているのもいい。明るさの中にも絶望感があるような気がするけれど、若さゆえの絶望感で全然凹まなかった。
『正義と微笑』と『パンドラの匣』が収められているこの本は、『人間失格』とか特有の暗さを持った作品を味わった後に読むのがお薦め。