seigoy's diary

旅人間。山やスキー場、京都、アジア中心に彷徨ってます。それに伴って、カメラや車、パソコンが大好き。

夜明け前(第一部)

夜明け前 (第1部 上) (新潮文庫)

夜明け前 (第1部 上) (新潮文庫)


夜明け前 (第1部 下) (新潮文庫)

夜明け前 (第1部 下) (新潮文庫)


書評を書くのは、実に3ヶ月ぶりくらい。その間は読む時間があまり取れなかったのもあるけれど、この『夜明け前』に没頭していた。久々にこんな字が細かい小説で、内容も興味深いからじっくり読んでしまい、よってめちゃ時間がかかってしまった。2冊読み切ったぁと思っても、まだ半分終わっただけ…。
「木曽路はすべて山の中である。」という文句で始まるこの小説。主人公は、よく行く中山道馬籠宿の本陣の当主で、木曽福島御岳神社、大平峠だって出てくるから、もう頭に風景が浮かんできてしまう。更には時代が幕末だから、興味深いってもんじゃない。この本の存在を気づかせてくれた友人に、大感謝だなぁ。
幕末っていうと、龍馬やら桂小五郎やら新撰組やら京都などを駆け巡り、時には逃げ隠れていた志士たちの話が多いから、その時代の細かい生活風景や旅の姿は描かれていない。でも、この『夜明け前』は基本が馬籠宿の駅長であり、中山道を通行する人々(時には参勤交代の行列)の世話から始まり、木曽福島の代官所(この土地が徳川直轄だという事も驚いた)までの行き来、時には江戸の奉行所まで中山道を旅した事、などなどが詳しく書かれているから本当にじっくりと読んでしまった。その反面、幕末の大きな流れはあまり書かれていないから、頭の中で時代の流れを思い出さなくてはならない。黒船来航から大政奉還の時代なのに、龍馬や新撰組は一切出てこなかった。
この当主は、駅長の役目を果たしながらも国学者として勤王の流れに心動かされていく。周りの仲間たちが京都へ行くのに自分はこのままでいいのだろうか、でも守るべき家族と役目がある。そんな真面目な、でも悩んでいる当主が大好きになってしまった。
このまま第二部に移りたい気はするけれど、でもちょっと休憩かな。秋くらいには夜みたいな。