seigoy's diary

旅人間。山やスキー場、京都、アジア中心に彷徨ってます。それに伴って、カメラや車、パソコンが大好き。

パンドラの匣

パンドラの匣 (新潮文庫)

パンドラの匣 (新潮文庫)


『正義と微笑』が日記形式に対して、『パンドラの匣』は友人にあてた書簡形式で進んでいく。書簡なのに生活や気持ちの変化の細部までリアルに表現されているのは、さすが太宰。
青春時代を病棟で過ごす生活は暗さがあって当然なのに、この作品は非常に明るい感じが良かった。看護婦に対する気持ちをひた隠しにして書かれているのは、青春時代特有の気持ちの変化を絶妙に捉えていると思う。そして最後にはその気持ちを表に出しているのもいい。明るさの中にも絶望感があるような気がするけれど、若さゆえの絶望感で全然凹まなかった。
『正義と微笑』と『パンドラの匣』が収められているこの本は、『人間失格』とか特有の暗さを持った作品を味わった後に読むのがお薦め。