破獄
- 作者: 吉村昭
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1986/12/23
- メディア: 文庫
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太平洋戦争時代に破獄を4回も繰り返した囚人の話。本屋でも手に取りそうにないんだけれど、友人が持ってて借りて読んでみた。
実際にいた囚人の話だとわかっていても、よくこんな手段で破獄するなぁって思う。味噌汁に手錠を浸して腐らせるなんて思いもつかない。よっぽど機転が利いて体力もずば抜けていたんだろう。そんな囚人は愛情に飢えていて、最後の刑務所では看守の優しさで心を開いていく様は実に良かった。ただ記録がなかったのか、破獄してから逮捕されるまでの生活はもう少し詳しく知りたかった。
メインの破獄だけではなくて、時代背景がしっかり描かれているところが凄い。太平洋戦争の勃発から終戦までの出来事がポイントを押さえあって初めて知ることもあったし、食糧事情も戦中、戦後まで詳しくて大変だったんだなぁと読んでいくことが出来た。駅や列車の風景も詳しくていい。そんな中での刑務所では、食料がなくなると暴動が起きるとのことで食料集めに奔走していたことや、網走刑務所は畑を持っていたことで食料には恵まれていたこと、終戦間際には一般人より穀物の確保が出来ていたのに栄養失調で死亡率が高くなったこと、などこの小説でなければ知ることが出来なかった事が多かったと思う。